量子コンピューターについて、アインシュタインにでも教えてほしいな。
ぜんぜんわからない・・・・・
GoogleとNASAが購入した自称「世界初の市販量子コンピュータ・D-Wave 2」についてスイスの理論物理学者が性能試験を行った結果、従来型のコンピュータに性能が及ばないことが判明しました。なお、D-Wave 2は市販価格1500万ドル(約15億3000万円)です。
Defining and detecting quantum speedup
http://www.sciencemag.org/content/early/2014/06/18/science.1252319Google’s quantum computer just flunked its first big test | The Verge
http://www.theverge.com/2014/6/19/5824336/google-s-quantum-computer-just-flunked-its-first-big-testPerformance of quantum computer no better than ordinary PC, say analysts – CSMonitor.com
http://www.csmonitor.com/Science/2014/0619/Performance-of-quantum-computer-no-better-than-ordinary-PC-say-analysts2011年5月に「世界初の市販量子コンピュータ」を宣言して発売されたD-Wave Systemのコンピュータ「D-Wave」は、「そもそも量子コンピュータなのか?」という点で賛否両論の見解が示されていましたが、かねてから量子コンピューティングを研究していたGoogleとNASAが共同で設立した量子人工知能研究所(QuAIL)が第2世代のD-Waveである「D-Wave 2」の購入を発表したことで「やはり量子コンピュータに違いない!」と話題になりました。
もっともD-Waveは、一般的な量子ゲート式の量子コンピュータと異なり量子アニーリングを超高速に実行することに特化しており「組合わせ最適化」という限られた命題を解くための装置であるとされ多様なプログラムを実行することを目的としていないため、やはり量子「コンピュータ」と呼べるかどうかについては議論は残っています。
いずれにせよ、プログラム次第でどんな計算でも実行できる汎用性のあるノイマン型コンピュータと違いD-Wave 2が特定の計算を実行できるだけであったとしても、計算速度という点で従来型コンピュータを圧倒する性能を実現していれば「量子コンピュータか否か」という問題はさておき、新しい技術として画期的であると考えられていました。
このような話題性ゆえにD-Wave2の性能は世界中の注目を集めていたところ、スイスのチューリヒ工科大学で理論物理学を研究するマディアス・トロイヤー博士とその研究チームが、2014年6月18日に科学誌Scienceで「D-Wave 2の演算能力は、従来型コンピュータと比べて大差ない」という内容の論文を発表しました。
トロイヤー博士は2013年4月にD-Waveの第1世代マシン「D-Wave 1」を使ってD-Waveが量子コンピュータといえるのかを考察する論文を発表した人物で、今回の実験では、Microsoft研究所から比較用のクラスタコンピュータの提供を受け503量子ビットを使ってランダム最適化問題を1000回解かせ計算時間をD-Wave 2と比較したところ、D-Wave 2はクラスタコンピュータに対して速度性能の優位性を認めることはできず、D-Waveに期待されていた量子スピードアップ(quantum speedup)と呼ばれる量子コンピュータ特有の加速兆候は示す証拠は見つからなかったとのこと。トロイヤー博士は、「『量子スピードアップが起こっていない』と断言することは難しいものの、従来型コンピュータよりも優れた性能を示せていない」と評価しています。
ただし、D-Waveは量子アニーリングを利用したコンピュータで一般的な量子コンピュータと異なる技術を用いており、量子アニーリングに関する研究がほとんど進んでいない状況に照らせば、マシンセッティングを煮詰める余地が多分に残っており実験を重ねてチューニングを行っていくうちに演算能力を飛躍的に高めることは十分可能という見解もあり。D-Wave Systemのジェレミー・ヒルトン・プロセッサ部門上級副社長は、「D-Waveの開発は継続中で、パフォーマンスアップのための改良について、いまだ限界を見ておらず、数年以内に従来型コンピュータを圧倒するパフォーマンスを実現することは十分可能である」と話しています。